墨液と墨汁って、どっちがいいの?
違いって何?
実は、墨液と墨汁は、どちらも一般名称で同じものを指します。
液状の墨で、固形墨よりも手軽に使えるのが特徴です。
じゃぁ、墨滴、書液、書道液は?
それは商品名です。
似たような名まえですが、成分がそれぞれ異なります。
今回は、墨に使われている原料を大まかにご紹介しますね。
趣味でゆるく楽しみたい書道初心者さん向けの、書道用の墨の紹介です。
今回は、墨の原料についてご紹介します。
全部同じように見える墨液に、実はいろいろな違いがあったことが分かります。
・墨液と墨汁は同じもの
・墨の原料の煤に違いがある。(油煙、松煙、洋煙)
・液体墨の大きな違いは膠系か、樹脂系か
墨とは
原料が煤、膠、若干の香料からできた書画用の材料です。
作りは、煤と膠を練り合わせ、香料を加えます。それを木型に入れ乾燥させます。
これが固形墨と呼ばれる、硯で磨って使うタイプの墨です。
固形墨よりも使いやすい液状にし、容器に入っている墨を液体墨といいます。
墨の原料
膠
膠は動物の皮や骨などから抽出したものです。コラーゲンといった方がイメージが湧きやすいかもしれませんね。
ただし、膠にはコラーゲンの他にもいろいろと成分が入っていますので、イコールではありません。主成分がコラーゲン、ということです。
ちなみに、コラーゲンの精製純度が高く、食用に加工されたのがゼラチンです。
墨における膠の役割は、煤の粒子をくっつけ形を固定してくれます。
また、紙に書いた色を固着させてくれます。
注意もあり、一度墨を磨ってしまうと早めに使い切る必要があります。
膠の成分と煤が分解が進み、滲みが強くなったり色の具合も変化したりします。
この状態を「宿墨」と言います。
※あえて宿墨にして作品を書くこともあります。
特に夏は注意で、高温多湿だと分解のスピードが速まるようです。
ちなみに私は放置し(過ぎ)て、「次の日まで残ってしまった鳥鍋」みたいな、
上がぷるぷる、下に煤が沈殿した墨を作りあげたことが、
あります!
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煤
煤は、油や木を燃やしたときに煙とともに出る、炭素の微粒子です。
燃やす原料や燃やし方の違いで、色味にも違いが出ます。これは、できあがった煤の粒子の大きさが違うためです。
粒子の大きさによって光の反射の仕方が変わり、見える色が変わってきます。
粗い粒子だと青っぽく、細かいと茶色っぽく見えます。
墨に使われる煤には、油煙、松煙、洋煙(工業煙)があります。
油煙墨
菜種油や椿油など植物油を燃やしてできた煤の墨。
植物の種類によっても変わりますが、粒子が細かく茶色系であることが多いです。
松煙墨
松の枝や皮を燃やしてできた煤。
青みの強い「青墨」は、この松煙墨の中に入ります。
洋煙墨
石油や石炭などの鉱物性の油を燃やしてできた煤。
改良煤煙墨、雑墨と呼ばれることもあります。
香料
膠には強い独特の臭いがあります。これを緩和するために香料を加えます。気持ちを落ち着かせる効果もある、らしいです。
代表的な香りは龍脳。
以前使ったことのある墨で、とても強い香りのもがありました。
あれは気持ちを落ち着かせるどころか、急いで窓を開けましたね・・・・・
液体墨の種類
この記事のはじめにも書きましたが、墨液と墨汁は同じものを指します。
商品を検討するときは、用途に合う墨であることを確認することが大事です。
「清書用」、「練習用」と表記してくれている品もあります。
価格に差が出るところでは、天然の膠を使っているのか、合成樹脂を使っているのかで分かれやすいです。
膠系
書き味が固形墨を磨ったものと似ています。
膠の固まりやすい性質を抑えるため、塩分が入っています。
紙に書いた後の固着にも時間がかかるので、表具をするときは1週間程度の乾燥期間が必要です。
樹脂系
膠の墨液と比べると滲みが少なく、力強い表現がしやすくなります。
乾きも早く、乾燥期間が2~3日程度といわれています。
使用期間が膠よりも長い(5年程度)とされていますが、商品によっても異なるので、よく確認することが大切です。
墨液を使うときの注意
・硯に出した墨液は使い切りましょう。
→空気に触れたものは劣化が進みます。容器に戻さないために、一度に多くの墨を出さないよう心がけていきましょう。
・樹脂系の墨液と固形墨は混ぜないで下さい。
→どちらの墨の質も変えてしまう可能性があります。
・直射日光や高温多湿な場所は避ける。
→劣化を早める可能性があります。
まとめ
・墨液と墨汁は同じもの
・墨の原料の煤に違いがある。(油煙、松煙、洋煙)
・液体墨の大きな違いは膠系か、樹脂系か
伝統的な作り方の固形墨であっても、近代に作られ始めた液体墨であっても、日々職人さんやメーカーさんによって改良されています。
一度買ってしまうと使い切るまで時間がかかって、多くの種類を試すのは難しいかもしれません。
ちょっとでも職人さんたちのこだわりを実感して、活かしていけるような書き手になりたいものです。
それでは、今回はここまでです。
読んで頂き、ありがとうございました。